寄与分
相続人の中に、被相続人の財産の維持、又は増加について、特別の寄与をした者がある場合に、他の相続人との間の実質的な公平を図るために、その増加をさせた相続人に対して、相続分以上の財産を取得させる制度のことを言います。
具体的には、被相続人の家業に従事して被相続人の財産を増やした人、寝たきり状態の親を自宅で介護をして、親の財産の減少を防いだなど(ヘルパーを頼まずに済んだことから、財産の減少を防いだものと評価されます)、被相続人の財産の維持、又は増加に、特別の寄与をしたと評価できる場合に、「寄与分」として、貢献した相続人の相続財産を増やすことができます。
なお、寄与分を主張できるのは相続人だけです。相続人ではない方が、どんなに生前相続人の世話をしていたり、あるいいは、事業資金を援助していたとしても、寄与分を主張することはできません。
例えば、内縁の妻には相続権が認められていませんから、寄与分の主張をすることはできません。
寄与分が認められた事例として、以下のような裁判例があります。
① 被相続人が死亡するまでの25年間共に家業に従事し、生活も共にして世話をしていた長男
(福岡家審S56.6.18)
② 37年にわたり、病弱の夫を扶養看護し、夫名義の不動産を妻の収入により購入した妻
(山形家審S56.3.30)
寄与分の計算方法
寄与分がある場合の相続分の計算方法は、遺産から寄与分を一旦控除して、みなし遺産を算出し、これを法定相続分に従って分配した後に、寄与が認められる相続人の相続分に寄与分を上乗せします。
以下、具体的な事例に沿ってご説明します。
【事例】本人の遺産が現金5000万円、相続人として配偶者及び子が二人おり、長男が被相続人の生前、被相続人の事業を手伝っており、被相続人の資産形成に1000万円分の貢献をしているとした場合
【計算式】
みなし遺産・・5000万円(遺産)-1000万円(寄与分)=4000万円
配偶者・・4000万円×1/2=2000万円
長男(事業に従事)・・4000万円×1/4+1000万円(寄与分)=2000万円
次男・・4000万円×1/4=1000万円
それぞれの具体的相続分は、配偶者2000万円、長男(事業に従事)2000万円、次男1000万円となります。
寄与分について疑問がある場合は、弁護士にご相談ください。