不動産オーナー・賃貸人の方へ
賃料増額請求の民事調停・訴訟
賃料増額を申し入れても、賃借人が増額そのものを拒否したり、増額幅について合意できなかったりすることがあります。
この場合、原則として「民事調停 → 訴訟」という順序で裁判手続を進めます。
賃料増額請求では、原則として先に民事調停を行います
賃料増減請求には「調停前置主義」があります
賃料増額について訴訟を提起する場合、原則として、まず民事調停を申し立てなければなりません。
そのため、「交渉が決裂したので、すぐに訴訟を起こす」という進め方が原則となるわけではありません。
民事調停では何をするのか
民事調停では、裁判官と調停委員から構成される調停委員会を介して、当事者双方が合意できる賃料額を探ります。
例えば次の事情が検討されます。
- 現在の賃料
- 契約締結時の賃料
- 過去の賃料改定
- 固定資産税等の変動
- 地価・物価等の変動
- 周辺の賃料水準
- 物件固有の事情
- 現在の賃料が決められた経緯
調停で合意した場合
双方が合意できれば、調停成立となります。
例えば、次の事項について取り決めることが考えられます。
- 今後の月額賃料
- 新賃料の適用開始時期
- 過去の賃料差額
- 差額の支払方法
- その他賃貸借条件
調停で合意できなければ訴訟へ
調停でも解決できなければ、裁判所に適正賃料について判断を求めます。
賃料増額請求訴訟を提起します。
また、すでに支払期が到来した賃料については、増額後の賃料と実際に支払われた賃料との差額を併せて請求することもあります。
訴訟では何が問題になるのか
増額する事情があるか
現在の賃料が不相当になったと認められる事情があるかを判断します。
適正賃料はいくらか
増額が認められるとして、具体的にいくらが相当な継続賃料なのかを判断します。
「何らかの増額が相当である」ことと、
「賃貸人が請求した金額全額が認められる」ことは別問題です。
調停・訴訟で準備しておきたい資料
- 賃貸借契約書
- 更新契約書・覚書
- 過去の賃料改定に関する資料
- 賃料増額通知書
- 内容証明郵便・配達証明
- 固定資産税等に関する資料
- 地価に関する資料
- 周辺の賃貸事例
- 対象物件の図面・資料
- 不動産鑑定評価書・意見書等
特に重要なのは「現在の賃料がどのような経緯で決まったか」です。前回の賃料改定の経緯や、その際に当事者がどのような事情を考慮したのかという点も重要になる場合があります。
増額分を支払わないことだけを理由に解除はできません
賃料増額を請求したにもかかわらず、賃借人が増額後の賃料を支払わない場合でも、賃貸人が請求した「増額分」を支払っていないことだけを理由として、直ちに賃貸借契約を解除することはできません。
賃料増額について協議が調わない間、賃借人は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、原則として自らが相当と認める額の賃料を支払えば足りるためです。
例現在の賃料が20万円で、賃貸人が25万円への増額を請求した場合でも、賃借人が20万円を支払い続けているというだけで、直ちに毎月5万円の賃料滞納として解除できるわけではありません。
もっとも、賃借人が支払っている金額自体が「相当と認める額」と評価できない場合などは別問題です。
解除を検討する場合には個別の事案に応じた判断が必要です。
裁判で増額が認められたら差額を精算します
最終的に裁判で増額が認められた場合、増額請求後に支払われていた賃料と、裁判所が認めた賃料との差額を精算します。
裁判で認められた賃料24万円
紛争期間24か月この場合、単純計算では
月4万円 × 24か月=96万円
の差額が生じます。
さらに、その不足額については、法律上、支払期後について年1割の利息が定められています。
訴訟では不動産鑑定が行われることがあります
適正な継続賃料が本格的な争点となった場合、不動産鑑定士による鑑定が行われることがあります。
もっとも、訴訟を提起すれば必ず鑑定を行うわけではありません。
鑑定費用と想定される増額幅などを考慮し、鑑定前に和解することが合理的なケースもあります。
賃料増額請求と不動産鑑定
鑑定の必要性・費用対効果について詳しく見る →
調停や訴訟の途中からでも弁護士に依頼できます
東京渋谷法律事務所では、増額通知の段階だけでなく、すでに手続が進んでいる場合もご相談いただけます。
- 自分で増額通知を出したが交渉が進まない
- これから民事調停を申し立てたい
- すでに調停を申し立てている
- 調停が不成立になった
- これから訴訟を提起したい
- すでに訴訟が係属している
賃料増額の調停・訴訟をご検討の方へ
現在の手続状況、想定される増額幅、鑑定の必要性や費用対効果を踏まえて対応方針を検討します。
